仮想世界の犯罪

(1999年7月記)

UO の元作品、ウルティマシリーズは4作目以降、人間の人徳というものを題材に展開していきました。
そして UO はネットゲームである性質上、さらに人間の個性がゲームに現れています。

現実社会において悪人と言うのはほんの一握りだけで、ほとんどの人が善人、善人とまで行かなくても他人に迷惑をかけたりしない一般の人ばかりです。
ところが仮想世界、ヴァーチャルワールドである UO の世界では、悪人の比率がリアル(現実)に比べて非常に多いです。
これは当然と言えば当然かもしれませんが、つまりどういう事でしょうか?

彼らは UO 上で他の人を騙し、殺し、奪う時、相手プレイヤーが怒り、恨み、悲しみといった負の感情を持つことは当然知っています。
その上で、彼らはそれを楽しんでいます。
彼らは感情のないNPCを襲うよりも、感情を持った人間の操るPCを襲う方を楽しんでいます。
これはつまり他人を傷つける事、困らせる事や、他人を倒して強さを誇る事を楽しんでいる訳ですが、これは本来全ての人間が持っている感情かもしれません。
自分が強くあり、そして周りが弱く、他人を無差別に襲い、次々と倒し、そして奪う。
それは確かに高い優越感を得られる、楽しい事でしょう。

しかし人間は常識や自己の罪悪感、相手に対する思いやりでそれを抑制します。
それが現実の世界であれば、ほぼ100%の人が抑制できるでしょう。
どんなに UO で凶悪な人でも、リアルでは一般の小市民であるはずです。
例えそこが無法地帯でも、相手が生身の人間であるならば、いきなり他人を見境なく襲うような人はまずいないはずです。

しかし仮想世界で、自分が匿名であり、相手も実体でない場合、多くの人がその境界線を越えてしまうようです。 相手の感情が確かな人間のものだとしても。

これは善悪の違いでしょうか?
それともただ単に個人の価値観が違うだけなのでしょうか?
たしかに UO はどこまでいっても、ヴァーチャルワールドにすぎません。
まあ人間の善悪基準や価値観は、簡単に移ろうものですが・・・
建前のない世界での人間の行動は、それを人間の本性と見るべきなのでしょうか?
それとも虚偽の世界でのお遊びと見るべきなのでしょうか?

最後に、UOとはかけ離れた話を1つ。
これはアメリカ陸軍で、実際に言われている話です。

「戦場で初めて人を殺し、顔が青ざめ体がガタガタ震え、
 何も出来なくなってしまう新兵でも、3人殺すと全く平気になる。」