ある添乗員の試練 その3、 ホノルルマラソン走破せよ!
(2003年1月記)
ハワイ・ホノルル島、12月。
毎年この島では、参加者数十万人にもおよぶ大規模なマラソン大会、「ホノルルマラソン」が開催されます。
42.195 Km のフルマラソンですが、日本からも著名人を含む多数の人が参加する、もうおなじみの大会ですね。
さて先月、旅行の添乗員の仕事をやっている友人は、とある企業の陸上部の方々がホノルルマラソンに参加しに行くツアーの添乗をする事になりました。
もちろん友人がやるのはあくまでツアーの添乗。
最初は本人がマラソンに参加するつもりは全くなかったのですが・・・
当然の様に、お客さんである陸上部の方々に参加を勧められます。
「せっかく行くんだから参加しないと損だよ〜。こんなチャンス滅多にないよ〜」(よくある攻撃)
「いやー、でも僕は普段走ることないし、マラソンなんてムリですよー」(回避)
「大丈夫だよ、40キロなんてすぐだよ〜。きみ若いんだから〜」(スペシャルムーブ)
「そうですかー? じゃあ僕も走ってみようかなー」(撃沈)
という訳で、その友人もホノルルマラソンに参加することになったのでした・・・

そして、ツアー当日。
日本をお昼頃に出発し、現地到着後、翌朝にスタートするホノルルマラソンに参加するというスケジュールだったのですが・・・
まず、この日程にムリがあった。
日本からハワイまでの飛行機での所要時間は東京からで約7時間。
実際には空港での手続きや移動などがあるため、もっとかかります。
友人を含む陸上部ご一行は朝からツアーに出発しますが、空港までの電車の移動などがあり、空港の到着がお昼前でした。
そして手続きなどを終えて日本を飛び立ったのがちょうど正午頃。
で、広島空港からの出発だったのでハワイまでの所要時間が約9時間。
本当は、この飛行機の移動の間に寝ないといけなかったのですが、おもいっきりお昼なのでぜんぜん眠れない。
そしてハワイ到着が日本時間の午後9時・・・ なのですが、時差によって4時間分すっとばしているので、すでにハワイ時間ではすでに現地時間夜中の1時。
その後、ホテルへの移動とチェックインなどを行ってたらもう夜中2時を過ぎる訳で、ホノルルマラソンのスタートは朝5時なのでもう準備と移動を開始しなくちゃいけない。
という訳で・・・ 寝てない! 寝るヒマはない!! 徹夜でフルマラソン決定。 ^^;

そして準備を追え、マラソン会場入り。
今回のホノルルマラソンの参加者は約40万人だったそうで、さすがにすごい人だったようです。
ちなみに参加者のうち、半数の約20万人が日本人だったそうで・・・ いやー、日本人、マラソン好きですねー。
著名人では吉本興業の 間 寛平 さんとかがいたそうで、ミーハーな友人は「カンペイちゃんだ〜」とその周囲をうろちょろしてたそうです。^^;
で、いよいよ朝5時になり・・・ ホノルルマラソン、ついにスタート!
一斉に 40万人 もの人がど〜っと走り出します!!
で、友人も一緒に走り始めますが・・・
元々この人、普段走る事など全くない上に、酒は飲むタバコは吸うで MAXスタミナ は限りなく低い!
ちょっと走ってすぐ息があがり始める! というか、スタート会場を出る前にもうバテバテ。
寛平ちゃんは弾丸ライナーのごとく走り去り、一緒に来た陸上部の方々も視界から消滅。
それでも何とか3キロぐらいまでは周りにつられて走っていましたが、この辺りから歩いたり走ったりになり、7キロ地点で遂にダウン。
そもそも長時間の飛行機移動で疲れてる上に、眠たいわ バテバテだわで、ついに道端に座り込んでそのまま休憩。 っていうか、睡眠。
その後、走る力もなくなり、長いホノルルマラソンならぬ、ホノルル遠足が始まったのでした・・・
少し寝て再びなんとか歩き始めますが、10Km 地点の給水所に到着しだ時点ですでにスタートから5時間が経過。 速い人ならとっくにゴールしてます・・・ ^^;
しかし 40万人 もいれば同様にバテバテの人は他にもいる訳で、日本人も多いし、そういった方々と少し喋ったりしながらなんとかゴール目指して歩き続けます。
が、ここから 5Km ごとにある給水所までがはるか長い!!
足を引きずって何とか 15Km まで到着、ホノルルマラソンの給水所ではカロリーメイトみたいな携帯食料も貰えるそうで、それとスポーツドリンクで飢えと渇きを凌ぎます。
が、ついに夜が訪れ、辺りは暗くなり、20Km の中間地点の給水所に少し広めの休憩所があったので、そこでその夜は休む事に。
この時点でスタートから 約20時間 が経過。
このマラソンはついにサバイバル状態へと突入します・・・

翌日、ホノルルの旅 2日目。
空が明けて来た頃に目を覚まし、朝食を貰ってから再びゴールに向かって少し走り・・・
バテて、そのあとまた歩き続けます。
で、その途中、ホノルルマラソンのコースはハワイの観光地を巡るようになっているらしく、観光地に通りかかったら中に入ってついでに観光したりします。
すでにマラソンではなくなっている・・・^^;
そして、何とか走ったり歩いたり休んだりしながら 25Km を過ぎ、30Km 地点に到着。
しかしこの時点で 35時間 ほどになっており、さすがに何度もスタッフの人からリタイアするかどうか聞かれるようになります。
でもここまで来たのにリタイアするのも嫌なので、ずっと断っていたのですが・・・ その途中、友人は衝撃の事実を聞きます。
実は、ホノルルマラソンのゴールゲートはスタートから 50時間で撤収してしまうらしいのです!
つまりそれを過ぎると、ゴールしてもそこには何にもない訳で・・・ これはもう、この上なくむなしい!
さすがにそれは嫌だと気合を入れ、その日は徹夜で進む事に決定!
そして夕方になり、夜が訪れ、辺りは暗くなりますが・・・
しかし、夜中になっても寝てはいられない!
少しの休憩を挟みつつ、僅かな携帯食料でエネルギーを補充しながら夜通し歩き続けます!
そして、夜が明け朝日が昇ろうとしている頃・・・ ついに 42.195Km 地点到着!
ゴーーール!! ホノルルマラソン完走! っていうか、完歩!
ゴールタイム 48 時間! ゴール周辺ではすでに後片付けが始まっていたそうです。^^;
一応、所定時間内のゴールなので、完走認定証と記念のTシャツが貰えます。
完走認定証の順位は、約38万位ぐらい。
参加者が40万人ぐらいでリタイアした人もいる訳だから、それってつまり・・・ ^^;
と、う訳で、無事ゴール。
当然のようにその日は完全にダウン。 ホテルで1日中寝てて、前日にとっくにゴールしていた陸上部の方々は、添乗員抜きでホノルル観光に向かったそうです。^^;
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いやー、やっぱりフルマラソンは長いですね〜!
でも、「今までで一番辛い仕事だった?」と聞くと、1番じゃないそうです。
もっと辛かったらしいのが、前にもこの日記で書いた、富士登山。
ホノルルマラソンは確かに長いですが、ハワイなので気候はいいし、景色は最高だし、5キロごとに給水所はあるし、道は平坦で舗装されてるしで、まだマシだったそうです。
富士登山はずっと坂道、おまけに砂利道、景色は地獄のようで、休憩場所は少ないし、登ったらまた下りがあるしで、こっちの方がキツかったそうです。
まあとにかく、普段走らないような人がいきなり 40 キロも走るのはやめましょう。
友人談:「死にそうだった。 マジで。 もう2度と行かない」